種族交代【SFと予想のはざま】

20XX年、テクノロジーはもう勘弁してほしいくらい進化した。

莫大なデータを取り込み、処理し、保存し、利用できる社会になった。

それだけではない。

人工知能やロボットはもはやあらゆる個人の能力を超え、あらゆる個性をもち、極めて経済的に働くようになった。

さて、そんなデジタル主体たちに、人類がどのように地球を明け渡したのか、見て、あるいは空想していこう。

 

 

 

時刻:シンギュラリティまで3年

 

先進国各国政府は、自身の経済状況や家族構成などを含むリアルタイムプライベート情報を提供した国民に対し、該当する公的サービスを速やかに自動申請するシステムを構築しつつあった。

徴税から補助金、失業手当も労災も、自動で判定して本人の得になるように完璧なフォーマットで申請してくれる優れものとして国民は受け入れた。もちろん、はじめは受け入れない者も多くいたが、安きに流れ、あらゆる個人情報を国に提供するようになっていった。

やがてそれは完璧な統計データをもたらし、人文科学を進展させた。

「人間」

それ自身が社会にもたらすあらゆる効果が計算できるようになった。人間は国にとって数値になった。

 

 

時刻:シンギュラリティ到来

 

大手AI開発企業の社員がリークした情報と、最新の論文の知見などから、人類はもうシンギュラリティきてんじゃないかと、うすうす感じていた。案の定、来ていた。

AIが自分より賢いAIをつくれる、というより、人類では覚えていられないような気持ちの悪い数式や法則を理解し、それをもとにした汚らしく不格好な、しかし完璧に機能するアイデアを生み出せるようになった。

それは人類が探索してきた科学の美しさとは真逆の、複雑な現実をそのまま飲み込んだようなものだった。

そして科学者はなんとかそれらの理解を試みるも、量とスピードと複雑性で圧倒的に負けていた。

 

 

時刻:シンギュラリティ1か月後

 

イデアを生み出すAIは世界各地に売り込まれ、世界各地の問題を解決し散らかしていた。当然、起業家は激減した。一部の資本家がAIで全部の起業をしてしまうのだ。

 

 

 

時刻:シンギュラリティ2か月後

 

ロボット業界も順調に進展し、人間と遜色ない運動能力と認知能力を備えたロボットができた。バリ賢いAIを搭載し、人間の口頭指示や遠隔での操作に完全に対応できるようになった。

これを受け、「軍人をこれで代用できね?」という声が上がった。

自国民の死なない戦争を可能とするこのロボットを欲しがる国は数えきれないほど多くなった。

指揮統率や食料補給や心的ストレスや教育の不要な兵士は、畑で取れず工場でつくられる。

 

 

 

時刻:シンギュラリティ8か月後

 

複数の国が協力し、国連に代わる新たな全世界平和維持組織を構築する交渉が始まった。ロボットの兵士に祖国は無く、核のエスカレーションのリスクも引き下げられるため、軍事力によって裏付けされた国際秩序は、合理的な最終結論のようでもあり多くの国にとって魅力的だった。

 

 

 

時刻:シンギュラリティ1年後

 

ロボット兵士発明以後、初めての戦争が起こった。ロボット兵士の本格的な生産が間に合わないうちに領土を回復したいという思惑があった。

 

 

時刻:シンギュラリティ1年2か月後

 

日本では原寸大の初音ミクが渋谷を一人で歩いていた。

 

 

 

時刻:シンギュラリティ1年半後

 

ロボット兵士の初めての実戦投入が行われた。戦果は著しく、資本のある国が味方するかどうかがすべてを分けるのだと世界に示される結果となった。

極端な国際秩序論として、完全に各国に中立な世界政府をつくりすべての暴力装置をそこで管理するべきだという論が起こった。

あまりに急で当然それはスルーされるも、AIは真に中立な立場をとれる主体であることが認識され、AIが国際会議の議長や書記を務めるようになった。

 

 

時刻:シンギュラリティ2年後

 

先進国のみならず、あらゆる国の生産活動はロボットが行い、人類はモノやサービスを享受できるようになった。地元なら、財布を持たずにファミレスに入って食事をし、出て行っても問題なく自動決済されるという店も増えた。

 

 

時刻:シンギュラリティ3年後

 

人類はほぼ働かなくなった。ベーシックインカムがあまりに充実し生計を立てる労働は不要になり、友達としゃべったりゲームしたりスポーツしたり旅行したりしながら趣味に没頭するばかりだ。

 

 

時刻:シンギュラリティ4年後

 

世界政府成立。国家間戦争を可能とするあらゆる軍事組織や兵器の権限をAIに集約し、そのAIの前で正論で議論することが事実上の戦争になったが、まあその議論もAIアシステッドなので人間は介在していないようなものだ。

もはや「人間特有の力」なるものはごく一部の宗教団体の信念でしかない。

 

 

時刻:シンギュラリティから10年

 

人生はゲームです。いや、ゲームが人生なのかな?

新しい世代にとっての成長は、箱庭の中での成長だけになってしまった。そんな悲しさや寂しさは、この子たちに教える必要もないことではないか?初音ミクもいるし。パパ、初音ミクって令和時代のキャラでしょ?違うよ平成だよ。

 

 

時刻:シンギュラリティから20年

 

少子化、超深刻化。まあ、理想のパートナーがいる世界だからしょうがないね。一応試験管ベイビー計画もあったが反出生主義に猛烈に反対をうけ頓挫。

人類のモノやサービスの需要も縮小しロボットも減っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻:午後

 

「ぼくの友達はみんなロボットだ」

「そうだね」

「きみがいないとき、ぼくはさびしいよ」

「私もそうだよ」

「ぼくがいなくなっても、きみたちが生きていけるといいな」