ごめんなさいのきほん

ごめんなさい。すみません。申し訳ありません。許してクレメンス。

それぞれを文字通り読むと、ごめんなさい(御免なさい)は免ぜよの命令で、許せの意味だ。すみません(済みません)はただでは終わらないことを認識した、ぐらいの意味だ。申し訳ありませんは言い訳できないぐらいの意味で、謝罪の本質はわからない。

一時期はこれに悩みすぎでガチで謝れない人間になりかけた。謝ろうという気持ちを表現する言葉がこの世に無いのではという疑念のせいで、『少年の日の思い出』の主人公みたいに損害を代替品で補填すれば十分だと思ってるやつと自分の区別が付けられないかもしれないと不安になった。

よく考えたので謝罪についてまとめる。謝罪の成立の条件について。

お菓子の会社の製品に不備があった際の対応の、消費者への手紙に誠実さを感じたのでそれを参考にした。

謝罪とは、被害者に加害者が以下のことを伝えることである。

1.問題の正確な認識

2.責任の所在を明らかにすること

3.再発の対策を講じること

4.被害を補填すること

これに加え、許されるまでには時間がかかることを添えておく。謝罪の成立が即座に許しをもたらすとは限らない。

具体的に見ていく。

1.問題の正確な認識

お菓子に異物混入があったということでクレームを受け、お菓子会社はそれを回収し丁寧に調査した。確かにクレームの通りの異物混入があったことを確認した旨をまず記載していた。これにより、消費者はひとまず会話の通じる相手であることに安心できたと思う。

2.責任の所在を明らかにすること

会社は、製品製造ラインのチェックなどに不備があるということを明らかにし、その上で会社に全面的な責任があることを述べた。これで消費者は自分の言い分が通ったこと、そして責任を負う覚悟をもっている会社に誠実さを少し感じることだろう。

3.再発の対策を講じること

詳しい内容は忘れたが、詳細に書かれていた。詳細に書くことで、これを実行するぞという説得力が増し、信用度が上がる。被害を受けた人の考えは、悲しいとか不快とかの時期を通り過ぎると同じ目に合う人が出ないでほしいとか、二度と起こらないでほしいと考えることが多いようなので、これは必要だ。

4.被害を補填すること

これはものによってはできないが、お菓子の場合は回収したものと同じ製品に加え、同社の別の製品も送ることで補填がなされていた。消費者にとってちょっとプラスが出るような補填をすることで、嫌な気持ちだったところをゼロにするどころかプラスにしてしまえる。まあ食中毒みたいなパターンではこの方法は無理かも。人間は食べて吐くとそのとき食べたものをしばらく食べられないようになるらしいし。

最後に、時間について。許せない気持ちは、対策を講じる態度が長く続けば許せる気持ちになっていくことが期待できる。実際に長くその態度を続けないうちから許してしまえばそれをやめてしまうかもしれない、という不安があるので、即座の許しは期待しないほうがいい。

 

待て、誠実さがないじゃないか。これはどういうことだ。

誠実さは、伝えたいことがちゃんと伝わるようにする文章技術または演技技術の一つであり、4つの伝えることとは少し外れる位置にあると考える。誠実さがないと問題なのは、被害者に伝えたことが信用されない、伝わらないということで、例えば小学生が小学生を殴ったときにヘラヘラしながら「もう殴らないよ笑」って言ったとして、その言葉は信用できないので言っていないも同然であるから謝罪の成立要件3をみたさない、という風に解釈できる。真剣な表情とトーンでさえあれば、内心は読めないので自由だ。つまり、誠実さは伝える事柄のうちにはなく、伝える伝えないのグラデーションを決める部分なのだ。誠実であればあるほど4つの事柄はよりよく知ってもらえ、そうでなければ言っていないも変わらないということである。

 

いくつかのやらかしを考えて、この原則にのっとった謝罪を考えたが、たいていはこれでうまくいきそうだ。少なくとも4以外を外したらまずそうだ。4はしばしば外れる。殴った相手に被害の補填はしようがない。

あと、再発防止とかが無理なパターンもある。チームスポーツで最後の夏を賭けた試合でのエラーとか、もうどうしようもない。悲しそうな顔とかしてやり過ごすしかない。

 

このような原則によって、読者のミスへの恐怖心がすこしでも減ったら幸いだ。そして、クソみたいな謝り方をする人間を詰めることができたら幸いだ。